歩き始めに痛む、階段の上り下りがつらい、正座ができない…。こんな悩みを持つ人は多くいます。日本全国の関節症疾病の患者さんは約143万人いると言われています(平成29年度調査)。病気やけが等で自覚症状がある方の調査では、症状別にみると手足の関節の痛みを訴える人は約690万人いるといわれており、男性では第5位、女性では第3位という結果がでています(令和元年国民生活基礎調査)。
その中でも、中高年のひざの痛みの原因でもっとも多いのが「変形性膝関節症」です。では変形性膝関節症とはどのような病気で、どのような症状が起こるのでしょうか?
私たちが体をスムーズに動かせるのは、関節のおかげです。関節にある骨と骨の表面にはクッションの役割をする軟骨があり、このために骨同士がぶつからず、滑らかに動かすことができるのです。変形性膝関節症とは、その軟骨が加齢や筋肉量の低下などにより少しずつすり減り、痛みが生じる病気です。
初期では歩き始めや立ち上がったときに軽く痛みを感じますが、すぐ痛みは治まることが多いです。
そこから軟骨のすり減りがひどくなると、動き始めだけでなく、動作中も痛みが続き、骨同士がぶつかりあって変形してきます。この状態になると、ひざが動かしにくくなったり、ひざに『水』が溜まるようになります。
軟骨のすり減りは年を重ねると誰にでも起こる可能性がありますが、特に次のような人は関節痛を招きやすいと言われています。
・女性
・肥満気味
・0脚
・過去に関節のケガをしたことがある
・骨粗鬆症など、骨量が減っている
・激しいスポーツをする
・運動不足
傷ついた関節を元の状態に戻すことはできませんが、関節に負担をかけない生活習慣や栄養バランスを心掛けた食事、正しい治療をすることで、痛みの症状を軽減することができます。痛みを感じたら放置せず、適切な対応をとりましょう。
さまざまな原因で起こるひざの痛み。足腰を動かさないでいると軟骨に栄養素が行き届かず、痛みの悪化に繋がります。特に、運動療法は薬物療法よりも効果があると言われています。今すぐにできる関節ケアを始めましょう!
適度な運動で筋肉を鍛える
ひざが痛いからといって動かないでいると、筋肉が弱り、さらに症状が進んでしまいます。できる範囲で運動を続け、ひざを支える筋肉を鍛えましょう。
肥満の解消
適度な運動と、栄養バランスのとれた食事を規則正しく食べることで、食べ過ぎや運動不足による体重の増加を防ぎましょう。
体重が1kg増えると、ひざへの負担が約2~3kg増えると言われています。体重が重いほど腰やひざへの負担は大きく、軟骨のすり減りを進行させます。
関節をきたえる栄養素の摂取
食生活は栄養バランスを考えた三度の食事をしっかりとることが基本です。その上で関節に役立つ栄養成分も摂取するようにしましょう。
たんぱく質
体を作る基礎である骨や筋肉、血液などの材料です。たんぱく質が不足すると関節に関わる筋肉や骨にも悪影響です。大豆製品や卵、乳製品などで良質のたんぱく質を摂取しましょう。
骨と軟骨に関わるもの
骨の材料であるカルシウムとその吸収を助けるビタミンD、そして軟骨を形成する成分の50%を占めるコラーゲン。コラーゲンは軟骨の強度や柔軟性、ハリを保ちます。
注目成分【コンドロイチン、グルコサミン】
「プロテオグリカン」と言われる関節軟骨の主成分がありますが、その材料となるのがグルコサミンとコンドロイチンという成分です。グルコサミンは軟骨の生成を促す働きがあります。コンドロイチンはドライアイの目薬などにも使用されるほど保水力が高く、軟骨の中ではクッションと潤滑油の役割を果たします。
洋式の生活を心がける
床に布団を敷いて寝起きしたり、正座をしたりする和式の生活は、ひざを深く曲げることが多く、ひざに負担がかかります。なるべく椅子やベッドなどの洋式の生活を心がけるようにしましょう。
ひざを冷やさない
寒さを感じると体温を逃がさないため血管が縮まります。するとまわりの筋肉が血行不良となり、硬くなります。硬くなった部分を伸び縮みさせようとすると、力がかかって痛みの原因となります。まずは体を温め、血行を良くすることが大切です。特に冬場外出する時は、ひざにサポーターなどをあてて、温めることをお勧めします。