同じくらいの身長だった母が自分より小さくなっていた、年配のご両親をお持ちの方はこのような経験ありませんか?逆に自分のご家族、お友達から「身長低くなった?」と問いかけられたことはないでしょうか。
身長が縮む3つの原因
人間の身長は、子供のころに伸び、成人を迎えるとほぼ成長は止まりますが、次第に背が低くなっていきます。個人差がありますが40歳以降では10年で1cm縮むというデータもあります。
背が低くなる原因は大きく分けて3つあります。
①加齢による水分減少
背骨は約30個の骨と軟骨が交互に積み重なっています。骨と骨の間でクッションのような役目をしている軟骨は、加齢により水分量が減少し、厚みが薄くなっていきます。そのため、身長が縮みます。これは誰にでも起こりうる加齢減少で、加齢に伴いある程度は仕方のないことです。
②骨粗鬆症による背骨の骨折
骨がスカスカになってしまう病気である骨粗しょう症になると骨が弱くなるため、体重などの圧迫がかかるだけで背骨がつぶれ、骨折することがあります。
骨粗しょう症はただ身長が縮むだけでなく、寝たきりの原因の多くを占める恐ろしい病気です。
誰にでも起こり、基本的に避けられない水分量の減少とはまったく別のものと考え、病気としてとらえることが必要です。生活習慣の見直しや治療が必要な、れっきとした病気です。
③姿勢、体のゆがみ
腹筋や背筋などの筋力が落ちると、骨盤や脊椎を支えきれなくなり猫背になったり、体のバランスが崩れて背骨が湾曲したりすれば、身長が低くなります。これは中高年の方に限ったことではなく、若い方でも生活習慣による体のゆがみには注意が必要です。日々の日常生活の中で対策が必要です。
ここで特に問題になるのは②です。
しかし、年を取れば自然に背中が丸くなって身長が縮むもの、仕方がないのでは?と思っている人も多いのが現状です。
この骨粗鬆症という病気は「骨の量が少なくなるのは老化現象だからしかたがない」と考えて、したがって予防治療も必要ないと誤解している人が多いのです。
骨粗鬆症は急激に骨量が減少する病気で、骨折は骨がもろくなるために起こる合併症のようなもの。ですから、予防や治療のために生活習慣を見直すことが必要となってくるのです。目に見えない骨は、日常生活の中で忘れられがちですが、このように体の中から外に向かってメッセージを送っているのです。
他に思い当たる点はありませんか?まずは自分の姿勢や身長など、ちょっと気にしてみて下さい。
3cm縮むと骨粗しょう症の疑い⁉骨粗しょう症が及ぼす影響
自分の身長が低くなった原因が骨粗しょう症なのかを探る目安のひとつに『何センチ身長が低くなったか』があります。IOF(国際骨粗しょう症財団)によると、18才のころから身長が3センチ縮むと骨粗しょう症の疑いがあるそうです。近年の研究では、2センチ以上の身長低下の場合は、50%以上の可能性で背骨の骨折があるという報告があります。
人は誰でも年齢を重ねると身長が低くなりますが、その身長の低下の理由が骨粗しょう症だった場合は「年のせいだからしょうがない」と思ってはいけません。
内臓にも影響が…骨粗しょう症の危険信号
骨粗しょう症は骨がスカスカになってしまう病気というイメージが強いですが、他にも見た目にはっきりと分かる変化があります。
骨粗しょう症で折れやすい部位として背骨があります。背骨の骨折は本人が意識しないうちに起こり、徐々につぶれるため、痛みがありません。頭の重みでおなか側の骨の方がつぶれやすくなるため、姿勢が悪くなります。猫背のような姿勢は、外見だけでなく、内臓にもさまざまな影響を及ぼします。もしかしたら、今お困りの症状も背骨のつぶれが原因かもしれません。
骨粗しょう症は“骨折の後”が怖い!
骨粗しょう症によって自覚症状がないうちに骨折が起こり、さまざまな影響が身体に起こります。ですが、それ以上に重大な問題が、骨折が起きた後なのです。
厚生労働省による調査では、高齢者が要介護になる原因として、骨折・転倒が4位、関節疾患が5位を占めています。
特に足の付け根(大腿骨頚部)の骨折は高齢になるほど起こりやすく、年々患者数が増えています。場所が場所だけに手術やリハビリに時間がかかり、歩行障害になったり、寝たきりへ移行する確率が高くなります。
背骨の骨折においては、1回骨折すると、次に骨折するリスクは3倍に、2回目には7倍にもなります。ですから、一番はじめに骨折しない健康な骨を作り、それを保つことが何より重要なのです。
骨折しない3つの骨づくりのアドバイス
骨は一見変化しないように見えますが、皮膚と同じように絶えず生まれ変わる新陳代謝をおこなっています。そのスピードは1年で約10%が入れ替わるくらい。骨を強くする習慣を心がければ、今からでも遅くはありません。
1.危険因子を取り除く
体の中からカルシウムを減らしてしまう要因がいくつかあります。加齢や性別、体格など取り除けない要因もありますが、自分で取り除ける要因もたくさんあります。
過度のアルコール摂取、喫煙
過度の飲酒は骨を作る細胞の働きを阻害します。喫煙は骨を守る女性ホルモンの作用を抑えることなどで骨の量が減少しやすく、また骨の質を低下させるため、骨の強度を二重に低下させます。
偏食、無理なダイエット
偏食や無理なダイエットは、体が必要としている量のカルシウムが取れておらず、骨量が減少しやすくなります。
食べる量が少ない人は要注意!
普段から食べる量が少ない人は、最低限のカロリーはとれていても、骨量をはじめとして健康を維持するための栄養素が不足している可能性も。
特別なダイエットをしていなくても、食べる量が少ないとカルシウムやビタミンの摂取量も少なくなります。
運動不足
骨は力がかかると強くなり、かからないと弱くなります。 運動が不足すると、骨にかかる負担が少なくなるため骨が弱くなり、筋肉なども衰えるため、転倒のリスクが高まる可能性もあります。
2.食事を改める
『骨粗しょう症の予防と治療のガイドライン(2015年版)」によると、骨粗しょう症の治療の際に推奨される食品としてカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む食品、果物と野菜、たんぱく質が挙げられています。また、過剰摂取を避けた方がよい食品としてリンを多く含む食品、食塩、カフェインを多く含む食品、アルコールが挙げられています。骨の健康をサポートするサプリメントを上手に使うのもいい方法です。コラーゲンやカルシウムのサプリメントは今日では各種そろっています。
3.運動をする
骨になる栄養素をとったら、あとは寝て待つだけ…。これではせっかくとった栄養も宝の持ち腐れです。身体を動かして、骨に圧力をかけることで、カルシウムは骨にくっつくことができるのです。
宇宙にいた宇宙飛行士が、地球に帰ってきたとき骨が弱くなっていましたが、これは宇宙という無重力空間にいたため、骨に圧がかからなかったからです。なにも激しいスポーツをする必要はありません。
基本は、ともかくよく歩く事、地面をしっかり踏みしめて、骨に圧力をかけましょう。
今からでも遅くない!
高齢期の人でも、軽い運動をすることで大腿骨あたりの骨密度が増えたというデータがあります(『骨粗しょう症の予防と治療のガイドライン(2015年版)」。 ただ、運動を中止すると効果も消えてしまいますので、骨粗しょう症だから、高齢だからとあきらめずに継続しましょう。運動することで神経や筋肉の機能が高まり転倒防止にもつながります。