シニア世代になると、子どもの独立や定年退職による生活スタイルの変化、老後の住まいへの準備などを見据え、家の建て替えについて考えることも増えてきます。
建て替えることで、住環境が向上すれば、より快適な暮らしが望めますし、もし介護が必要となったときも、対応がしやすいというメリットがある反面、資金面でのしっかりとした準備が必要です。
そこで今回は、スムーズに建て替えを進めるポイントや老後の住まいについて、お話ししたいと思います。
建て替えかリフォームか
家の建て替えを進めるためには、まずは建て替えかリフォームか、しっかりと検討して決めることが大切です。
今の住まいが古くなった、または使い勝手が悪くなった場合、より快適に暮らすためには、建て替えとリフォームという2つの選択肢が考えられます。
双方にメリット・デメリットがあり、それぞれの住宅事情や資金計画などによってどちらを選択するかが決まるのですが、そのためにはそれぞれの特徴を知っておかなくてはなりません。
建て替えとリフォームの違いを知ること、それが1つめのポイントです。
建て替えやリフォームではなく、便利な都市部への住み替えを検討している方は「便利な都会へのお引越し!?老後を快適に過ごすための50代からの住み替え」の記事で、シニア世代が定年後に快適に暮らすための家の選び方について紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
建て替えのメリットとデメリット
建て替えとは、今ある家を解体し、いちから新たに家を建てることです。
メリット
家を新しく建てる建て替えは、すべての間取りも設備も新しく設計し直せますので、自由に希望通りの家を建てることができるという点が大きなメリットです。
もし、地盤に不安がある場合も、調査から改良工事までを確実に行えますので、将来的にも安心です。
デメリット
建て替えの一番のデメリットは、大きな費用が掛かるということです。
建て替え費用には、仮住まいや2度の引っ越し代も含まれるうえに、工期もリフォームより長くなることが多く、精神的・身体的な負担もかかりやすいと言えます。
その他、土地の条件によっては、建て替え前よりも小さい家しか建てられなかったり、建て替え自体が出来なかったりする場合もあります。
また、抵当権の再設定などの事務的な手間もかかるという点がデメリットです。
リフォームのメリットとデメリット
リフォームとは、住まいの劣化した部分や古くなって使いにくくなった部分を修理・修繕したり、交換したりすることです。
基本的には、元の状態に戻すことを言いますが、より住みやすい状態にするリノベーションもリフォームの1つとなります。
老後に向けてのバリアフリー化などのリフォームの場合は、リノベーションの区分ですね。
元の家の基礎や柱のみを残して、大幅なリフォームをする場合は、フルリフォームとも言います。
メリット
部分的な工事が多いリフォームは、建て替えよりも費用が掛からないという点が大きなメリットです。
リフォームの規模によっては、住みながら工事が行えますので、引っ越し費用や仮住まいの費用も必要ありません。
省エネ・バリアフリーなどのリフォームなら補助金の対象になる可能性もあります。
もちろん土地の条件に関わらず工事ができるので、建て替えができない場合にフルリフォームで対応することが可能です。
デメリット
資金面では、建て替えよりも安くなることが多いのですが、耐震性や断熱性を高めるなど、家の構造体にまで関わるような大規模リフォームの場合は、建て替えと変わらない、もしくはそれ以上の費用が掛かることがあります。
また、フルリフォーム以外では大きな間取り変更は難しい、全体的な耐久性のアップは望めないという点がデメリットです。
この先どんな生活をしたいか
建て替え・リフォームそれぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、次はあなたがこれからどのような暮らしを目指しているのか、計画しているのかを考えてみましょう。
- ずっと夫婦二人・おひとり様で住み続けることを前提としている
- 二世帯同居の予定がある
- いずれは施設へ入るつもり
- 賃貸や店舗としての資産としての可能性も考えている
なども建て替えか、リフォームかの判断材料となります。
ただ「建て替えよう」ではなく、しっかりと先を見つめてから、選択すること、これが2つ目のポイントです。
資金の準備
じっくりと検討した結果、建て替えを決めたなら、先立つものは資金です。
十分な資金の準備、そして老後の生活を確保した上での資金計画を立てることが3つ目のポイントです。
家の建て替えにかかる費用を大きく分けると、工事費用と諸費用となります。
建て替えの費用
工事費用には、
- 家の解体工事
- 本体工事
- 給排水や電気・ガスの工事
- 地盤改良工事
などが含まれます。
諸費用としては、
- 引っ越し費用
- 仮住まいに関わる費用
- 印紙・登記費用
- 火災保険料
- 住宅ローン手数料
などがあります。
家の規模や建て替え内容などにより、費用額には違いがありますが、例えば夫婦2人のコンパクトな家を建て替える場合でも、総額2,000万円以上は必要です。
余裕のある資金計画を
60歳以上で住宅ローンを組むことは可能ですが、条件によっては難しいことも多く、建て替え費用をどうするかは大きな問題です。
前もってある程度の建て替え資金を準備しておくことはもちろんですが、今後の生活に不安がないだけの老後資金も用意しておかなくてはなりません。
どうしても資金が足りないと思うときは、無理をせずに建て替え以外の方法を考えてみましょう。
参考までに、シニア向けの住宅ローンの種類について紹介しておきます。
リバースモーゲージ型住宅ローン
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、自宅を担保に借り入れを行い、契約者が存命中は利息のみを支払い、亡くなった時点で自宅売却や一括返却などによって返済するものです。
通常のリバースモーゲージとの違いは、その使途が住宅関連の費用に限られるところで、建て替えやリフォーム費用としても利用ができます。
ただし、契約者や配偶者が亡くなり、自宅売却による返済を選択した場合は、資産としての自宅と土地は無くなります。
子どもに相続する予定がなく、自分たちが亡くなった後は家の処分を考えているなら、リバースモーゲージ型の住宅ローンの検討をしてみても良いのではないでしょうか。
老後におすすめの間取り
こちらからは、シニアが快適に暮らせる建て替えのポイントについて紹介します。
断熱性と耐震性の確保は必須
地震国日本において、耐震性を高めることは命を守ることに直結します。
また、特にシニアにとっては、気温の急激な変化も下手をすると命に関わります。
冬場のヒートショックの恐ろしさは、すでにご存じかと思いますが、ヒートショックは脱衣所や風呂場だけで起こるとは限りません。
部屋と廊下・トイレとの温度差や寝室から別の部屋へ移動したときの温度差も無視できないのです。
そのため、耐震性はもちろん、断熱性能を高めることは健康なシニア生活には欠かせない建て替えポイントと言えます。
介護動線・家事動線を見据える間取り
将来、万一介護が必要となったときや車いすの移動が日常となったときのために、玄関から居間、寝室、トイレ、風呂、廊下への動線を確保しておくことが必要です。
移動する距離をなるべく短く、廊下などの動線の幅は広げておきましょう。
また、同時にキッチン・トイレ・風呂・洗面所などの水回りをなるべくまとめておきましょう。
家事動線を考えて、動きやすいレイアウトにしておくことで、家事や介護がスムーズに行えます。
ヒートショック対策も兼ねて、出来るだけ移動を短くするなら、廊下を作らない間取りもおすすめです。
扉を引き戸にする
家の中の扉は、開き戸(押したり引いたりして開ける戸)ではなく、横にスライドして開ける引き戸にしておきましょう。
車いすの移動も楽ですし、ちょっとしたことなのですが、シニアにとっては家の中の動きが楽になります。
段差がなく、手すりがある住まい
シニアにとって、下半身の怪我は、寝たきり生活への入り口になりかねません。
長い時間を過ごす家の中は、出来るだけ安全な空間にするためにも、段差をなくしましょう。
階段がある場合は必ず手すりを付けてください。
先々のことを考えると、廊下や部屋の中にも、そしてもちろん風呂場やトイレにも必要ですね。
ただ、これはあくまで私の個人的な意見ですが、すべての段差をなくしてしまうのは、結果的に足腰を弱める可能性があるのではないかと思います。
例えば、玄関には手すりを付けたうえで、段差をそのままにしておく、その代わりに将来的にスロープが作れるだけの広さを確保するなどの工夫をしても良いのではないでしょうか。
人は、楽をすればするだけ身体がなまるものです。
健康でいるうちは、少し手間がかかる、身体を使わなくてはならない程度が、元気でいられる秘訣のような気がします。
まとめ:あなたに合った住まいで楽しく暮らそう
快適で健康にも良い暮らしをするための建て替えやリフォームは、シニアにとって大切なことです。
しかし、絶対ではありません。
安心な老後のための建て替えに、無理な費用ねん出をしたことで、毎日の生活が苦しくなるようでは本末転倒です。
ポイント1:建て替えとリフォームの違いをよく知り
ポイント2:将来を見据えた住まい計画を考え
ポイント3:余裕のある資金計画を立てる
そして、建て替えを決めたなら、より暮らしやすい間取りを考えましょう。
ポイント4:耐震性と耐熱性能のアップを図り
ポイント5:介護動線と家事動線の確保して
ポイント6:扉を引き戸に
ポイント7:手すりを付けてなるべく段差のない室内にする
シニアのライフスタイルに合わせた建て替えのポイントに、あなたの希望や思いを取り込めば、最高の建て替え計画になるのではないでしょうか。
今回の記事を参考に、ぜひ素敵な住まいを実現させてくださいね。
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