あなたの住んでいる地域には、シニアが気軽に集える場所はありますか?
趣味をするためだけでなく、ただおしゃべりしたり、ちょっとした体操をしたりしながら、楽しく時間を過ごすような場所は、シニアにとってとても大切です。
認知症予防としても有効な「通いの場」は、厚生労働省も推進し、今や全国に広がっています。
「通いの場」とは?
「通いの場」とは、地域の住民が年齢を問わずに集まり、さまざまな活動を通して交流し、社会参加や介護予防の拠点とされている場所のことです。
生きがいや仲間づくり、認知症予防対策として、特にシニアにはおすすめの場といえます。
「通いの場」はどこにある?
「通いの場」は、介護施設や公民館などの他、誰でも気軽に立ち寄れるような喫茶店、空き店舗、学校など様々な場所で運営されています。
運営に携わっている人も地域の民生委員、自治会、ボランティアなど様々です。
どんなことをしているの?
全国にある「通いの場」では、地域ごとに特徴がありますが、一般的には次のような活動がよく行われています。
茶話会でのおしゃべり
お茶やお菓子の提供があり、おしゃべりを楽しむ活動です。
ほかに、簡単なゲームをしたり、子どもたちに昔の遊びを教えたり、ちょっとした趣味の会などが開かれたりしています。
ひとり暮らしの方は特に、一日中ほとんど口を利かない場合もあるのですから、ただおしゃべりするだけでも気分がスッキリすると思います。
軽い運動
高齢者でもできる健康体操やストレッチ、地域によってはヨガや太極拳なども取り入れています。
近所への散歩や、ウオーキングなど、身近な自然を楽しんでいるサークルもあるそうです。
園芸や農業
きれいな花を植えたり、野菜を育てたりする活動も、多くの地域で実施されています。
土をいじるとホッとするという方もいらっしゃいますし、子供たちと一緒に農業体験をするのも楽しいですね。
健康講座
専門家による健康講座や簡単な認知機能検査、介護予防のレクチャーなどが行われていることも多く、高齢者とともに、いずれ介護者になる可能性のある大人も参加されているようです。
健康については、年齢を問わず関心を持っておきたいことですから、このような講座が地元で実施されると、とても助かりますね。
趣味の教室
手芸や編み物、囲碁や将棋などの趣味を楽しめる場を提供している地域もあります。
ひとりでもできる編み物や手芸も、仲間とおしゃべりしながら行えば、いろいろな作品が作れそうです。
相手が必要な囲碁や将棋の場合は、同じレベルの人と指し合ったり、子どもたちに教えたりすることもできます。
カラオケや合唱が好きな方も多いでしょう。
大勢で歌ったり、大勢の人の前で歌ったりすることは、ストレス解消になるとともに、脳活としても良い活動です。
このように、新しい仲間と一緒に、いろいろなことにチャレンジしたり、ただおしゃべりしたり、可愛い子供たちや若い人たちと交流したりすることは、シニア世代にとってはなによりの健康法であり、アンチエイジングとなるはずです。
実際に「通いの場」で活動に参加されている方も、今までよりも楽しく暮らせるという声を多く聞きます。
「通いの場」のメリット
シニアが「通いの場」に参加することで、得られる効果・メリットを紹介しましょう。
毎日が楽しくなる
通う場があることで、暮らしにハリが出て、毎日が楽しく過ごせるという利用者はとても多くいらっしゃいます。
「通いの場」が楽しみになった、おしゃべりができるのでうれしいという気持ちの上での効果と、自宅から歩いてその場へ行くということで、運動ができて体力がつくという点でも、メリットがあります。
社会参加への意欲
「通いの場」は、人から与えられる場と言うよりは、みんなで作り出す場であり、ひとりひとりが助け合い、協力し合いながら活動しています。
仕事をリタイヤした方の中には、社会とのつながりがなくなった、自分の居場所が見つからない、と感じてしまうことがありますが、「通いの場」なら、みんなと協力する中で、自分の役割を見つけることもできます。
生きがいを持ち、再び社会参加への意欲を持ち、新たな生活を前向きにスタートすることにもつながるのです。
閉じこもりを防ぐ
高齢になると、足腰が弱くなり、外へ出るのがおっくうになりがちですが、仲間が迎えてくれる心地よい場所があれば、外出する機会も増えます。
「通いの場」で、お互いを気遣い、声を掛け合うことで、いつも誰かが自分を見ていてくれるという気持ちを持つこともできます。
誰にも注目されない、気にされないと、次第に自分自身にも関心が無くなり、生きる意欲まで失いかねません。
そうならないためにも、気軽に集まれる場所が必要なのです。
身だしなみに気を使う
高齢になっても、身だしなみを整えて、いつもきれいな人っていらっしゃいますよね。
顔かたちではなく、すっきりとした身なりではつらつとしている、髪もぼさぼさじゃない…。
外出をしたり、友達と会ったりするようになると、今までそんなに気にならなかった服装や髪型も気になるものです。
あの人のようにいつもきれいでいたい、せっかく外に出かけるのだから、もう少しおしゃれをしよう、という気持ちが自然に沸き起こってきます。
見られていることをほんの少し意識するだけで、身だしなみを整えたくなるのです。
きれいにしていると自分自身の気持ちが前向きになる→もっとみんなと過ごしたくなる→毎日が楽しくなる→生きがいができる→脳にも良い刺激がある→もっと前向きに生きられる…という好循環を生み出すことにもなります。
認知症予防になる
「通いの場」では、運動やヨガ、太極拳、ウオーキング、散歩など、身体を動かす活動も多く取り入れられています。
無理なく体を動かすことで、適切な活動量が確保でき、認知症予防の効果も期待されています。
もしも、思い通りに体が動かせなくても、友達や若い人たちと交流し、笑い合うことだけで、十分認知症予防になるはずです。
健康に関心が持てる
介護やリハビリテーションの専門家、大学の先生などによる講義、健康機能検査の実施などにより、今まで以上に自分の健康に関心を持ち、気にする方が増えています。
あまり気を配っていなかった食事も栄養を考えた献立にしてみたり、もっと運動にチャレンジしてみたり、生活が変化してきた方もいらっしゃいます。
何より、自分の健康に関心を持つということは、楽しく、元気に生きるうえでとても大切です。
さまざまな「通いの場」を見てみよう
シニアにとって良い効果がいっぱいの「通いの場」は、すでに全国に広がっています。
各地域でさまざまな楽しい取り組みがされていますので、少しのぞいてみましょう。
多くの住民が集まるカフェ
北海道沼田町では、全世代が通える大きな家をコンセプトに、地域医療・介護福祉・子育て支援・健康運動の拠点を地域各地に置き、さまざまな活動が行われています。
「なかみちカフェ」は、多くの住民が集まる交流の場となり、ワンコインランチも好評です。
また、一般の市民が無料で利用できる健康運動室「トレーニングルーム」、町民懇談会、ワークショップなども開催されています。
歩いて介護予防!
宮城県大河原町には、町内に「通いの場」が数か所ありますが、それらを知ってもらうために「ぐるっとカフェめぐりスタンプラリー」が実施されています。
認知症カフェやスポカフェ、コミュニティカフェなどに来所すると景品がもらえ、通いの場へ来るきっかけにしてもらおうという取り組みが行われています。
地域交流地点「芝の家」
東京都港区には、「ただ来て良い場所」としての地域コミュニティの場があります。
「芝の家」は大人も子供も、在勤者も在学者も誰でもOK、誰でも出入り自由で、コミュニティ喫茶があり、昔遊びもできます。
学生ボランティアも活躍中で、年齢を問わずに集まり、おしゃべりをする昔の町がそこにあるようです。
地域に根付いた「ふれ愛塾」
秋田県横手市の「通いの場」は、一人になっても、障害があっても、いつまでもこの町で、住民とつながって、自分らしく暮らしたいという思いで、住民たちが立ち上げたグループが運営しています。
誰でも立ち寄れる場所「寄りあい」では、ランチの提供・体操・ゲームなどのイベントが、ふれ愛ホームカフェでは、お茶やお菓子の提供・介護予防プログラムの実施・介護や認知症などの情報提供が行われています。
また、外出・通院の同行・家事・話し相手など高齢者のお手伝いをする有償ボランティアによる支え合いも地域に根付いています。
この他にも、農業体験を通じて新たな介護予防事業を行う、世代間交流の場の充実など、楽しく明るい老後生活を送るためのさまざま取り組みが全国で行われています。
「通いの場」は、高齢者にとって必要であることはもちろん、これからは地域住民全体にとっても、地元の活性化や交流の場として重要な場所になって来るのではないでしょうか。
みんな元気に「通いの場」へ
高齢者のための憩いの場と言ってしまうと、まだ私には早いと抵抗したくなる方もいらっしゃることでしょう。
ですが、地域住民が協力し合って作る交流の場なら、参加してみたくないですか?
シニアだから、高齢だから、ではなく、子どもも大人も学生も、みんなが元気に集まれる「通いの場」
そんな素敵な場所が、どんどん増えているのです。
あなたもぜひ地域の「通いの場」を見つけてみてください。
きっと新しい仲間が待っていますよ。
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