50代、60代は、そろそろ先々の生活について具体的な準備を始める時期です。
お金のこと、健康のこと、仕事のこと、そして家のこと。
元気なうちはいいのですが、いずれ身体が動かなくなった時、自宅で安全に暮らせなくなるかもしれません。
そこで今回は、老後の生活を託す施設についてお話しします。
施設の種類や選び方のポイント、入居までの流れなどについて、解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
老後施設の種類(一覧)
老後施設には、介護施設・老人ホームなど様々な種類がありますが、民間企業が運営する民間施設と、運営母体が自治体・社会福祉法人などの公的なものとに分けられます。
民間施設 | |
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・設備やサービスが充実していて、レクリエーションやイベントなども多く提供 ・公的施設よりも費用が高い場合が多い | |
介護付き有料老人ホーム | |
住宅型有料老人ホーム | |
グループホーム | |
健康型有料老人ホーム | |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | |
シニア向け分譲マンション |
公的施設 | |
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・主に要介護度が高い方や低所得の方向けの支援を重視した施設 ・入居費用や月額費用が比較的安い ・入居希望者が多いため、入居までの待ち期間が長くなる | |
特別養護老人ホーム(特養) | |
介護老人保健施設(老健) | |
介護医療院 | |
ケアハウス(介護型) | |
ケアハウス(一般型・軽費老人ホーム) | |
養護老人ホーム |
入居の対象などにもなる介護等級については、「【早見表付き!】介護等級ってなに?要支援と要介護の違いを解説」をご覧ください。
民間施設の特徴
民間施設それぞれの特徴や入所対象者について説明しましょう。
介護付き有料老人ホーム
専門のスタッフによる介護サービスが24時間受けられる施設で、食事や入浴、レクリエーションなど、さまざまなサービスが提供されています。
認知症の方の受け入れやペットとの入居が可能など、受けられるサービスや設備は、施設ごとに異なりますので、事前の確認が必要です。
基本的には、要介護の方が入居対象ですが、施設によっては自立されている方も入居できる場合があります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームには、自立されている方から要介護度5の方まで入居可能となっています。
ただ、施設では介護サービスの提供がないため、外部サービスを利用しなくてはなりません。
自立されている方の入居が多いので、さまざまなイベントやレクリエーションが行われることが多いです。
基本的には、終身利用ができる場合が多いのですが、24時間体制の介護が必要となった場合、退去しなければならない施設もあるので、注意してください。
グループホーム
グループホームは、認知症で要支援2以上の方が入居対象となっている施設です。
認知症の知識を持ったスタッフが24時間体制でサービスを提供し、入居者は5~9人ほどのユニットと呼ばれる集団での生活を送りながら、認知症のケアを受けています。
そのため、要介護度が高くなり、身の回りのことができなくなると退去しなければならない施設もあります。
健康型有料老人ホーム
介護を必要としない自立している方が利用できるのが、健康型有料老人ホームです。食事や洗濯、清掃などの生活支援サービス、イベントやサークル活動なども盛んな施設が多く、充実した老後を送りたいと考えておられる方におすすめの施設です。
ただ、要介護になると退去しなくてはなりません。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)
サ高住は、自立されている方や介護度の低い方向けの施設で、施設内はバリアフリーになっています。
安否確認・生活相談サービス、施設によっては食事や清掃などの生活支援サービスが提供されている場合もあります。
通常の住宅とほぼ変わりない暮らしが可能ですが、介護が必要になると、外部のサービスを利用しなくてはなりません。
要介護度が高くなったり、認知症が重度になったりすると退去しなくてはなりません。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、通常の分譲マンションと同じように所有権があり、かつ高齢者が暮らしやすい設計になっている施設です。
施設によっては、スポーツジム、シアタールーム、温泉などの設備があり、充実した生活を送ることができるほか、基本的な生活支援サービスも受けられます。
要介護になった場合は、外部のサービスを利用しなければなりません。
公的施設の特徴
公的施設それぞれの特徴は次の通りです。
特別養護老人ホーム(特養)
特養は、65歳以上で要介護度3以上の方が対象となっている施設です。
在宅での介護が難しく、常に介護を必要とする方がサービスを受けられます。
食事や入浴、リハビリ、レクリエーションなどのサービスが提供されているほか、多くの施設で看取りの対応も行われています。
介護老人保健施設(老健)
老健は、病院を退院する際に、自宅での生活に向けてリハビリが受けられる施設で、入居期間は原則3~6ヶ月と決まっています。
専門のスタッフによるリハビリのほか、食事や入浴などのサービスもあり、常勤の医師による手厚い医療ケアも受けられます。
ただこの施設は、自宅での生活、社会復帰を目指す施設なので、長期間の利用はできません。
介護医療院
介護医療院は、長期にわたり高度な医療を必要とする高齢者が入居対象となっている施設です。
医師・看護師が常駐していて、ほかの施設では対応できない医療ケアも可能となっています。
終身の利用もできて看取りの対応も可能ですので、最期まで安心して暮らせます。
ケアハウス(介護型)
介護型のケアハウスは、ひとり暮らしで要介護度1以上、65歳以上の方が対象になっている施設です。
食事・洗濯・掃除などの生活支援の他、リハビリ、生活介護などのサービスが受けられます。
基本的には、介護度が上がっても退去の必要はありませんが、施設によっては住み続けられない場合もあるので、確認が必要です。
ケアハウス(一般型・軽費老人ホーム)
一般型のケアハウスは、ひとり暮らしに不安のある自立されて高齢者の方が対象となっている施設です。
ご夫婦の場合は、どちらかが60歳以上なら入居できます。
介護サービスは原則提供されておらず、食事や洗濯などの生活支援サービスのみです。
要介護となり、自立した生活ができなくなると退去しなくてはなりません。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、経済的・身体的・精神的・環境的な理由で、自宅での生活が難しい高齢者を対象とした施設です。
食事の提供や健康チェックなど日常生活に関する支援が行われています。
介護サービスの提供はなく、入居後に介護が必要となった場合は、外部の介護サービスを利用します。
介護度が上がると、退去しなくてはなりません。
施設を選ぶときのポイント
施設の特徴や違いが理解できたところで、次は上手な施設の選び方についてお話しします。
入居希望施設の絞り込み
まずは現在のあなたの状態、健康面・経済面・精神面などから、入居できる施設を絞りましょう。
そして、どうしても譲れない条件、妥協できる条件などをまとめます。
具体的には
- 初期費用と月額費用
- 自立者向けか要介護者向けか
- 立地エリア
- 医療体制
- ペットとの同居について
- 終身入居が可能かどうか
- 看取り対応 など
これらの条件は、施設の公式ホームページをチェックしたり、資料を見たりすることで確認できます。気になる施設があれば、どんどん資料請求をしてみましょう。
ある程度希望の施設が絞れれば、実際に施設の雰囲気を見てみましょう。
施設見学
施設見学をする際に確認しておくべきポイントは、以下の通りです。
- 周辺の環境やアクセス
- 施設内の清潔さ
- スタッフの雰囲気
- 食事メニュー
- 入居者の様子
特に施設見学をしないとわからない施設内の雰囲気や入居者の様子は、しっかりとチェックしましょう。
玄関、廊下、居室、トイレ、風呂などの清潔が保たれているか、臭いは気にならないかなど施設内がどのくらい清潔を保たれているかは、毎日生活するうえで大切なポイントです。
また、入居されている方が、楽しそうに過ごされているのか、生き生きとされているかもチェックしておきましょう。
もし可能なら入居者の方とお話ししてみてください。
入居者とスタッフとのコミュニケーションはよくとれているかどうかも見てみましょう。
入居者にとって施設スタッフは、毎日顔を合わせ、さまざまな支援をしていただく人たちです。
ちょっとした雑談や、相談が気軽にできるようなスタッフがいてくださると、毎日がより楽しく過ごせますので、わかる範囲でスタッフの様子も確認してください。
施設によっては体験入居も実施されていますので、希望の施設が決まったら、本入居の前に体験入居をしておくと安心です。
施設入所までの流れ
無事にあなたの希望に合った施設が見つかり、入居が決まれば、あとは入所するだけです。
入所までの流れは、施設により多少異なりますが、大まかには次のようになります。
仮申し込み
本契約の前に仮申し込みをして、仮押さえします。
施設へ入所するには、医療機関からの書類を用意しなければなりませんので、仮押さえの間に書類の準備、面談の予約を取ります。
入所に必要な書類には「診療情報提供書」や「健康診断書」などがあります。 いずれも主治医・病院から発行されますが、特に「健康診断書」の発行には2~3週間ほどかかるのが一般的です。
面談
面談では、施設スタッフと入所希望者、その家族、ケアマネージャー(入所希望者が要介護者の場合)で行われ、入所者の健康状態や入所希望条件などを確認します。
入居審査
面談内容を受けて、施設内で入居審査が行われます。
入居審査の内容は、入所希望者の健康状態や経済状態、要介護度などです。
入居審査が通れば、本契約に進みます。
契約
施設と本契約を行い、入所日を決めます。
契約時に必要な物 | 印鑑 印鑑証明 身元引受人・連帯保証人の印鑑 身元引受人・連帯保証人の印鑑証明(施設による) 戸籍謄本 住民票 |
もし不安なこと、気になることがあれば、ここでしっかりと聞いておきましょう。
入所
入所日に合わせて、引っ越しを済ませて、施設に入所します。
入所時に必要な物(一例) | 衣類(パジャマや下着も含む) タオル類 洗面用具 食器類 靴(外履きと内履き) テレビなどの電化製品 家具 その他日用品 |
必要な持ち物は、施設によって異なりますので、契約時にいただく書類などで確認してください。
まとめ:楽しい老後のために準備はしっかりと
最期まで自宅で過ごしたいとお考えの方も、病気や怪我により希望通りに暮らせないこともあります。
今は現実的ではなくとも、老後施設について知っておくことは、決して無駄ではありません。
老後を心置きなく暮らすためにも、この機会にぜひ一度、施設について家族で話し合ってみましょう。
そうすればきっと、今よりもっと充実した楽しい未来になるはずです。
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